情熱人インタビュー♯2 脚本演出家・ミュージカルユニット代表 平岡円香(ひらおかまどか)さん

今回登場していただく平岡円香(ひらおかまどか)さんは、
大学卒業後にミュージカルユニット「ヒラオカンパニー」を立ち上げ、
自身の舞台の脚本・演出を手がけています。

 

「夢を絶対叶えてやる!」という気負いはななく、

「気づいたらこうなっていた」と語る彼女に今回インタビューをしてみました。

 

ミュージカルや演劇に興味がある方はもちろん、

小説や音楽などのの作品を作ることに興味がある方にも参考になるお話だと思います。

 

インタビュー・文/増田正弘

 

——もともとは、脚本・演出家ではなく、ミュージカル俳優志望だったそうですが、

なぜ役者ではなく、脚本を書く立場になったのですか?

 

大学(神奈川県・洗足学園音楽大学)にミュージカルコースという学科があって、
そこで私は仲間と一緒にミュージカルの勉強をしていました。

 

ミュージカル俳優を目指す勉強に取り組んでいたんです。

 

でも、4年生になったある時期から

「私は演じるよりも、作品を作るほうが自分に合っているな」と思ったんですね。

 

そこからミュージカルの演出に興味を持ちはじめました。

ちょうどその時期に、演出論と戯曲論という授業があることを知って、

私はどうしてもその授業が受けたくなったんです。

 

それで4年生の前期は、教職の授業を受けていて、

時間がかぶっていたので受けることができなくて悔しい思いをしたんですね。

でも、どうしてもその授業を受けたくて。

単位はもらえないけど、後期は授業だけを受けに行ってました。

 

そこで演出の面白さを体感しました。

 

また、戯曲論という授業では、実際に戯曲を自分で書いてみるワークがあって。
そこではじめて自分で戯曲を書いてみて、

それが「なんて自分に合っているんだ!」と思って。

新たな発見でしたね。

 

それでその授業を担当していた先生に、
「わたしも脚本1本書いて、学校で実際に公演をうちたい!」と言ったんです。

そしたら先生が快くオーケーしてくれて。

 

そこで初めて書いたのが「Princess Princess!」という戯曲でした。
この戯曲を学校の演劇公演で実際に上演することができました。

 

後から聞いたら、学生による作・演出の作品を演劇公演で行うのは初だったらしいです。
そこからよりいっそう「もっと戯曲を書きたい」と思うようになったんです。

 

もともと作り手気質はあったんだと思います。

小さい頃は絵を描くのが好きだったので、漫画家を目指していました。
自分でストーリーを作って遊んでいた子どもだったので。

 

——その戯曲「Princess Princess!」では俳優さん達はどうやって集めたんですか?

 

戯曲論を受けていた仲間にそのまま出演をお願いしました。
「私の書いた話だから出て」みたいな感じで(笑)。

私の戯曲って、役者さんありきなものが多いんです。

役者さんの魅力を引き出せるような登場人物を物語に登場させるんですね。

「この役者さんには、こういう魅力があるから、そこを引き出せるような人物は、

こんな性格や行動をするよな」みたいな。

 

台詞ひとつにしても、役者さんの性格や顔を見ないと

「この台詞をこの役者さんには言わせられないな」と思ってしまうんです。
たとえば、この子の風貌で「○○だにゃん」ていうのは似合わないだろうとか。

 

だから役者さんとのコミュニケーションも私にとってはとても大事なんですよ。

 

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——出演してもらう役者さんを選ぶ基準てあるんですか?

性格がいいことです(笑)。どんなに歌や芝居が良くても性格がイヤならちょっと…。
ひとつの作品という同じ船に乗る船員たちは、いちがんとならないと先に進めないですよね。
どんなに船の操縦がうまくても、和を乱す人は、その船では一緒にゴールを目指せませんよね。

 

——作品を書く周期はどれくらいですか?

 

いまのところ1年間に2、3本書いている計算です。

自分の頭の中にアイディアはいっぱいあるんですけど、

やっぱりこの役者さんが出てくれるというのが分からないと、

役者さんの魅力を引き出す台詞や表情の当て書きができなくて。
それをしないとなかなか筆がすすまないんです。

 

それと私、脚本を書いているときの記憶があまりないんです。
苦しいんですよね、書いているときって。
眠いし、「あーめんどくさい」と思って。

頭のなかではもうお話ができているので、それを形に起こすのが、
ただただめんどくさいみたいな。

なので苦しくてあまり書いているときの記憶がないんです。

 

——なるほど。ところで、ご自身の作品に何か共通したコンセプトは?

 

「あるある」です。私は自分の体験したものの中でしか、お話を書けないので。

 

私はすごいお笑いが好きなんです。とくにモノマネが好きで。
細かすぎて伝わらないモノマネとかあるじゃないですか?

あれがなんであんなにおもしろいのか考えていたら、

「これはどこかで見たことがあるからだ」と。
中川家とかの街の人あるあるのモノマネっておもしろいじゃないですか?

あれは自分が街やどこかで見たことがあると思うから笑うと思うんです。
有名人のモノマネしている人も「あの人なら、きっとするよね」

というものが笑いになってますよね。

 

人がラブストーリーを見て泣くのも、自分がそういう思いをしたことがあるから泣く。
演劇や映画を見て、泣くのって、自分の記憶の中から、
そのときの感情がよみがえって来て心に響くんじゃないかなと思って。

 

だから、わたしの中でお話のテーマは一貫して「あるある」。

共感がなければ、何もお客さんとは繋がれないから。

お客さんの記憶をよみがえらせていくような感じですね。
「こういう経験あなたもしたでしょ?」と語りかけるような感じで舞台を作っています。

 

——「あるある」をテーマにするうえで気をつけていることはありますか?

 

例えば、冬になって息を吸い込んだときの、あの感じを思い出しながらお話を書いたり。
鶏肉を切っているときの感触とかを書いたりとか、ぜんぜん日常とかでいいんです。

 

あるあるや共感って決して大げさではないんですよ。
女子高生とかが付き合いたての彼氏とかに「なんなのォ〜、もォ〜」とか

言ったりするじゃないですか?

それをお話に盛り込んだりとか。

そういう「あるある」が多ければ多いほど、お客さんとの絆というか

距離がどんどん縮まっていくと思うんですよね。

 

——なるほど、「あるある」をテーマにしているというのは、おもしろいですね。
話は変わりますが今度は「ヒラオカンパニー」のことについて教えてください。
そもそもどういう経緯で立ち上げられたのですか?

 

もともと大学の卒業アルバムにふざけて、
「平岡のカンパニーで、ヒラオカンパニーという会社を立ち上げたい!」ということを
卒業アルバムの寄せ書きの将来の夢ってところに適当に書いたのがすべての始まりです。

 

しばらくしてから大学卒業後に、仲間でライブをやろうとなったんです。

 

そしたら仲間から「じゃあ、平岡は脚本も書いていたし、

演出みたいなことをライブでやってよ」と言われて。

それで取りあえずユニット名を決めようってなって。

 

だったら卒業アルバムに書いた「ヒラオカンパニー」って名前ににしようってなって、

それがそのままずっと今も続いています。

 

気づいていたら、こうなっていたという感じです。

 

なりたいと思ってやっているわけではなかったんですよ。

「自分のミュージカルユニットをつくるぞ」と言ってやっていたわけではないんですよ。

1本目の作品の上演が終わって、また2本目かけないかと仲間から言われてそこから、

どんどん作品が生まれていった流れなんです。

 

「次はいつやるの?」とか待ってくれるお客さんが出て来て。

「じゃあ、途絶えさせてはいけないね」ということで、次書いて、次書いてっていったら、

こうなった感じです。

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——公演を続けていくうえで、集客や収益などシビアな問題に直面することもあると思いますが、
その度にご自身で辞めたいと思ったことはこれまでありますか?

 

考えることはありますよね。

劇団の仕事だけで食べていける人たちってごくごくわずか。

 

みなさんほかの仕事をしていらっしゃるので。
でも、私はまわりも支えてくれている状況なので、生活とお話づくりと両立ができています。

 

作品づくりに打ち込める環境が整っているんなら、そうすべきだなと思っていました。
よく人生の成功者のおじさまとかには「大丈夫なの?」と言われるんですけど。

 

「大丈夫なんじゃないですか」と答えてます。

そんなに深刻には考えてません。

「たぶん私が書いたお話に出ているみんなならいけるんじゃない」みたいな。
考えは甘いかもしれませんけど、「何があっても絶対大丈夫でしょう」と思ってます。

 

——その確信はどこからくるのですか?

 

だって役者のみんな演技が上手だし、みんながすごいから。

そのみんなが演じる舞台って絶対すごいものになるから、大丈夫でしょと思うんです。

仲間への信頼というか。「人生で良いことしか起きてないから、大丈夫でしょう」と思ってます。

役者のみんながいるから、
私は未経験だったのに「Princess Princess!」という戯曲が書けておまけに上演ができたわけだし。

 

みんながいたから「ヒラオカンパニー」というユニットが動き出せた。

みんながいるから今の活動ができていて。
だから、みんながいるから、この先の活動も大丈夫でしょうと。
みんながいるから、今まで良いことしか起きていない。
みんながいれば全然良いことしか起きないんじゃないのと。

 

私は自分がスターになりたいとは思わないんです。
私の書いたお話で、役者のみんなにスターにはなってほしいとは思いますけど。

 

何をそんなに将来不安だと思うのか。
たしかに将来を不安に思う気持ちも分かるんですけど、
私はこれまで、良いことしか起きていないから、

この先も良いことしか起きないんじゃないかなと思ってます。

 

——ご自身で脚本をつくる才能はあると思いますか?

 

ないと思います。書き方をならったことはないし。

もっとほかに才能をもった人はいっぱいいるけど。
才能っていうのはおこがましくて。

 

でも、つまらない舞台を見たときは「私のほうが絶対面白いものを書くのに」と思ってしまうけど。

それを才能とするには、自分にはあまりにも経験が少ないので、そこまではいけないなと。
これを才能と呼ぶにはまだまだ私は未熟すぎます。

 

——ミュージカルの魅力ってどこにありますか?

 

ミュージカルの表現の仕方って、自由でもあり縛りもあるものなんです。

縛りというのは、絶対歌わないといけないし、踊らないといけないし、芝居しないといけない。

ミュージカルって演劇の中でも。自由そうなイメージがるけど、実際はそういう縛りがあります。
でも、これがまた面白い要素でもあるんです。

なにやってもいいんですよね。歌っても踊っても、台詞言ってもいい。

ミュージカルというと、歌と踊りとお芝居という3種の神器が効果的にできるんですよね。
その点がさらに見てもらう人に興味を持ってもらえる要素がたくさんあるなと思って。

 

楽器の演奏があっても、歌がそこにあったら見ようと思うし、ダンスがあったら見ようと思うじゃないですか?

そういう感じで機能しているのかなと思います。

やっぱやっていて楽しいので。

その楽しさをもっともっと皆さんに知ってほしいですね。

 

——今後やってみたいことは?

 

子どもが見て、楽しいと思えるようなものを書いてみたいなと思います。

けっこう私が書くものって私が喜ぶものしか書いていないから、ちょっと大人向けだったりとか、

女子がクスリと笑うような、ちょっとブラックユーモアがきいているストーリーなんです。
だから子どもには聞かせられない単語とかも入っていたりするので。

今後は子どもが見られるものも書いてみたいなと思います。
私は既存の曲を使うのが手法なので、童謡を使った子ども向けミュージカルを作ってみたいですね。

あとは先ほどの子ども向けのミュージカルとは反対に、

なにかと話題だった不倫を題材にしたミュージカルを作ってみたいです。

とくに昭和初期に起きたの阿部定(あべさだ)事件をミュージカルにする野望はあります。

 

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——作品を書くという行為はご自身にとってどういうものですか?

役者のみんなが輝くことだと思います。
自分がものを書くとみんなが活きる。

そういう思いで、いつもお話を書いてはいるんですけど。

 

自分がどうなりたい、どうしたいというよりは、役者のみんなが与えてくれたものを私が形にして、
その作品に、役者のみんなが命を吹き込んでくれる。そういう想いでやっています。

 

ミュージカルに限らず、演劇はコミュニケーションですから。

私がお話を書いて上演するという行為は、役者のみんなやお客さんとのコミニケーションです。
お話を作り続ければコミュニケーションがどんどん広がっていくんじゃないですか。

だからこの先、何があっても絶対大丈夫だと思っています。

(インタビュー終わり)

 

 

「ヒラオカンパニー」の舞台に出演している役者の川部真実(かわべまみ)さんの話。

「作品を書くようになってから、平岡は以前よりも人と関わるようになりました。
昔は自宅に引きこもって、インドア派でした(笑)。
いろんな人に会い、いろんな場所にいくようになりました。

それと私から見ても、平岡は感性が豊かなんだと思います。
漫画も読めば、ゲームもするし、ミュージカルに限らずいろんな芸術を見に行く。
その自分が見たものをおもしろおかしくアウトプットするのがうまい。

人を喜ばそうとする才能に長けていると思います。」

 

(取材後記)

平岡さんに、お話をお伺いするなかで感じたのは、
余計なチカラが入っていないことでした。

ご本人も語っているように、「○○したい!」っていう
強い願望ではなく、どちらかというと流れに身を任せて
自分のやるべきことをたんたんとやっていたら、こうなった。
という印象が強いです。

自然体って言葉が似合う方でした。

 

平岡円香(ひらおかまどか)さんプロフィール:

影響を受けた人物は、ショートショートの作風で有名な作家の星新一と

替え歌で有名な嘉門達夫という平岡さん。

自身の作風にもこの二人の影響を受けているそう。
今後の公演情報は「ヒラオカンパニー」の公式サイトで確認できます。

◆ヒラオカンパニーHP
http://madoka2721.wixsite.com/hiraocompany

◆Twitter
https://twitter.com/hiraocompany